亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


裏ではしっかり国内状勢を偵察されているなど、バリアンは全くもって知らない事実だろう。

とにかく、内紛であるならば問題はバリアンのみに止まるが、被害らしい被害が直接的でないにしろ、その火の粉を被る可能性は大いにあると言ってもいい。
他国からの火の粉対策として、国境沿いには兵士を配置しておく。その付近の農村の民にはあらかじめ避難警告を出しておく事も忘れない。

何が起こっても、対応出来る様に。




「…バリアン側の兵力がどれくらいか……ま、お手並み拝見ってところだね。砂漠地帯での戦闘方法なんてそうそう見れるものじゃないし。…三槍とやらも知っておきたいかな。………もしかしたら今後……何らかの形で関係を持つ連中かもしれないし?」

…今回の内紛はまだまだ序の口である…と、ダリルは考えていた。
長年、あの老王を悩ませてきた反国家組織なのだ。出動したバリアン兵士の数からして、彼ら三槍が総動員で動くという訳ではないらしい。

…規模は小さめ。内紛に終止符が打たれるのはまだまだ先と見ている。





「……随分とまぁ…反国家組織側を褒めるのですなぁ………少々過大評価し過ぎでは?」

三槍の兵力は、予想よりもたいしたことは無い、と考えているらしい執務官の一人がそう言うと………ニヤリと笑みを浮かべたダリルが、一瞥してきた。












「………内紛って、怖いんだよ?」






………と、二年前まで反国家組織側の兵士だったダリルが一言呟けば、「………説得力がありすぎます」と、執務官は苦笑した。



















右から左へ、左から右へ。上から下へ。下から上へ……と、人の群れが慌ただしく過ぎていく様を、ぼんやりと見詰める。
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