亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
(……妖精さんだって………大丈夫って…言ってるもん…)
…そう自分を励ましつつも、でももしかしたら…などと嫌な想像ばかりが沸いて来る。
その辺の大人よりも大人で、酷く冷静な態度に無垢な子供の笑顔を被っている、子供らしくない子供のルウナだが。
………母のローアンのこととなると、それは一変。
極度のマザコンがあからさまに表れ、一気に感受性豊かになる。
そしてそれは今も例外ではなく……母の事が不安で不安で不安でとにかく不安で堪らなくなったらしいルウナは、その場で突然立ち上がるや否や…。
無駄に音が響き渡るこの一階の大広間のど真ん中で、「―――…やあぁぁぁぁぁ―!!」と、盛大に泣き出した。
…勿論、誰もが会話を中断し、足を止め、思わず手元の荷物を落とし…ピーピー泣き喚く小さな王子様に慌てて視線を移した。
ルウナを囲む様に、顔面蒼白の召使や兵士達が職務も忘れて寄り集まる。………一旦泣くと、なかなか泣き止まないのだ。
階上からは、ダリルが足を止めて騒々しい一階の様子を見下ろしていたが、とりあえず仕事に戻ろう…と、王子の世話係としてはあるまじき完全放置を続行した。
誰かに咎められても「子供は泣くものだよ」と淡泊に述べるダリル。
泣きたいなら泣きたいだけとりあえず泣いておけ、というのが彼の持論である。
あたふたと周りが宥めようとしているが、ルウナは両手をブンブン振り回し、聞く耳さえ持とうとしない。
「やあぁぁ!!やー!!いやぁー!!やだやだやだやだやだやだ!!…お、お、お祈り、して、くる!!お花にっ…水やり、して、くるの!!お祈りぃ―!!するの!!父上にお祈り!!やあぁ―!!お水っ…水持って来て!!いやあぁぁぁぁ!!」
キャーキャー泣き喚く王子様に、水の入ったじょうろを持ってアレクセイが飛んでくるまで、あと三秒。