亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「………狩人の世界では……依頼主からの依頼を遂行する事は、絶対の義務。投げ出したり、裏切ってはならない。………………しかしあの狩人の様に…途中で断念せざる得ない場合………………………………別の狩人が、その意志を継ぐ…」


………レトはじっとザイの言葉に耳を傾けていた。


………ああ、だから………この親子を助けたのか。



………狩人は何かと………使命や義務という重荷を背負う生き物だ。






「………あの狩人は死に際に………貴女方と契約を交わした証である、証石を我等に託した。…………………………託された我等は、彼の意志を継がねばならない………。………………レト、何だその嫌そうな顔は…」

「……そんなの…生まれて初めて……聞いたから………」

「……………………………それ故に、だ…」

ザイはレトのぼやきをあからさまに流した。………ちょっとだけ、レトは父を睨んでみた。


「………依頼の内容を、教えて頂きたい。…………………今、貴女方と契約を結んでいる狩人は………我等だ…」















…ザイとレトが見守る中、サリッサはしばらくの間…無言だった。

揺れる焚き火の炎を映す瞳は、ぼんやりとした薄明かりを宿していて…。



………何を秘めているのか。

























「―――……………護衛を…」

サリッサは乾いた小さな唇を僅かに動かした。

………数分の空白を経て呟かれた言葉は、あまりにも短く…消え入りそうな程小さかったか。

そんな小さな言葉も聞き逃す筈の無いザイは、サリッサの言葉を復唱する。

「…………護衛…とは…………貴女方をか…?」


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