亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
サリッサはコクリと頷いた。…視線を傍らの息子に移し、小さな溜め息を吐いた。
「―――………と言っても……………………………正しくは……………この子の護衛です。…………私は、違います……」
「………子供のみ…?………それはどういう意味です……………………その子供は、一体何なのですか……」
ザイはユノという少年を見詰めた。
…釣られる様に、レトも焚き火越しに少年を見た。
少年は微かに声を漏らし……ゆっくりと寝返りをうった。
「―――………………………………この国の……王政が崩壊した経歴を……………御存知でしょうか……」
ザイとレトは揃って眉をひそめた。
……彼女はいきなり何を言い出すのか……。
王政崩壊?
…………それは今から……数十年程前に遡るだろう。
隣国バリアンとの長きに渡る攻防戦の………最後の……戦火。
………それ以来……永遠の冬季は激しさを増し………当の攻め滅ぼして来たバリアンは…………………占領地としたこの国に足を踏み入れようともせず……手付かずのままだ。
「…あの亡くなられた狩人も言っておられましたが……………………狩人というのは、契約した依頼主の事に関しての一切を…秘密にする……誰にも…………他言…無用………と…」
「………当然だ。誓おう……」
「………」
レトは答える代わりに黙って頷いた。
……すると、サリッサは何やら意を決した様に……先程よりも真剣な面持ちで……顔を上げた。
よく分からないが………言い知れぬピリピリとした緊張感が漂い始めた。
「―――………率直に告げます」