亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………カイはパチパチと瞬きを繰り返した。
「―――………は…?」
………どうしよう。
……我が主……自分がいない間に柱とか床で頭を打ったのかもしれない。激しく。
………嗚呼、これ以上気苦労が絶えない事なんてきっと無い。無いに決まってる。そう無理矢理明るく考えていたのに。
内心、アイラに対してかなり無礼な事を考えていたカイ。
青ざめるそんなカイを尻目に、アイラは独り言の様に呟き続けた。
「………綺麗だ。……………とてもね。…………………何者をも魅了するあの輝きは………高貴で………凛としていて……」
………スッと、伸ばしていた手を引っ込めた。
「―――………届かない」
「…………アイラ様………」
………少しだけ、様子がおかしい主人を覗き込み、カイは首を傾げた。
―――途端、アイラは振り返った。
……こちらを真直ぐ見てくるその顔は相変わらず綺麗で………………………意地の悪い微笑を、浮かべていた。
「…………………………………自分でも、驚いているよ…カイ。………………………………………私はね……………今、とても……………………………」
―――あれが、欲しい。
―――高貴な、あれが。
「―――………………………あの……女が」