亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「…………王よ、興奮し過ぎて白の魔術が発動しかかっておりますよ。……………術者の貴方様はともかく………私はこのままでは丸焦げになりますねぇ。どうか、お静まりになって下さい。このケインツェル、心からの切望です。フフフフッ!」
…自身の危機を前にいつもの調子でニヤけるこの側近は、どこまで神経が図太いのか。
それともただの阿呆か。
老王は恐怖故か、言い知れない怒り故か、震える荒い息を吐きながら、肘掛けに爪を立てる。
……血走った目は何も映しておらず、何も見る気は無い。
「………ならぬ………ならぬならぬならぬならぬならぬ…!!………………あの城は………開けてはならぬぞ…………開けさせてなるものか……!!………………王族が………忌々しい………!!」
「………バリアン王………如何なされたのですか?」
珍しいものを見る様な目で、ケインツェルは異常に震える老王を眺めた。
ここで自分がつつけば、面白い事になるかもしれない。
しかし、このままにしていれば……数秒の間、ちょっと我慢すれば………もっと、もっと…………。
(―――…面白い事になるかもしれない………!)
出したくて堪らない、ムズムズする手と口を、我慢して抑えた。