亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――…な、んで……何で?………どう…して…?」
その場にいる全員がユノ同様、唖然と…驚きを隠せず目を丸くして微動だに出来ずにいた。
…実際、何が起きたのか誰にも分からなかった。
予想外の事態を前に誰も口を開く事が出来ない中で、たった一人………ノアだけが、何故か妙に落ち着き払った無表情でユノの小さな背中を見詰めていた。
その背中が勢いよく、ノアに振り返る。
…いざ交えた視線は不安と苛立ちを孕んでおり、整った顔立ちには相応しくないしかめっ面を見れば、彼が混乱しきっていることは丸分かりだった。
………それも、当然の反応だろう。
「………ねぇ、どうして…?どうしてだよ……ノア…」
答えが知りたい、と鋭い目付きでユノは震える声音を漏らすが…ノアは何も答えない。そのままそっと、静かに視線を逸らすノアに、ユノは血が滴る自分の右手を突き付け、叫んだ。
「何で…?………どうしてだよ?………ノア…どうして…僕は今…………………弾かれたんだよ!!」
…そう、弾かれたのだ。
自分が座るべき玉座に………この手が、見えない力によって弾かれたのだ。
それはまるで、拒絶されたかの様に。
近付くなと言わんばかりに、見えない刃を向けられて。
「…ノア………答えなよ……………どうして黙っているんだよ、答えてよ……僕は答えろって言ってるんだ…!!…ノア!!」
「―――……………このノアも…何と………お答えするべきなのか…」
募る苛立ちが次第に表面に浮かんでいくユノ。睨み付けてくる青い瞳に映る自分の姿を見詰めながら、ノアは重い口を開いた。