亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~


「―――………その玉座は…王となるべき人間が座るもの。そして玉座は、王を選びます。玉座の意思は、創造神アレスの意思そのもの。触れる事が許されるのは、王となる人間のみ。アレスの選ぶ…王のみ…………………つまり、極端な話…一言でお答えするならば………」

















―――貴方は、王になる人間ではない。























「………っ…!?」

ノアの簡素な答えは、ユノにとって…それはもう残酷なものでしかなかった。

手の傷は、正しく拒絶の証だった。
………王ではない?そんなこと…あってはならない。何かの間違いだ。違う。

違う。






「―――…そんなことないよ!……新しい王様は、ユノだよ!間違いだよ!」

不意打ちの様な絶望感に打ちひしがれ、ギュッと手が白くなるほど手を握り締めるユノを見て、それまで黙っていたレトが声を上げた。

小走りで玉座の前に近寄り、ノアの目の前で立ち止まると悲しげな表情で見上げた。




「………ユノは、王様だよ。………ユノが王様じゃないなんて…間違ってる…!…だって………ユノは王子様なんだよ!……王族の生き残りの………前の王様の血を引いている、たった一人の王子様なのに……!………………嘘だよ……こんなの嘘だよ……!」


ユノが王族の末裔であり、王位継承の資格があるのは間違いない事実なのだ。
突き付けられた不可解な現実に意を唱えるのはユノやレトばかりではない。背後で震えていたサリッサも、両手を握り締めて一歩前へ歩み出て来た。

「………………そんな筈…あ、ありません!…この子は正真正銘の…!………何故なのですか?…もしかして………わ…私のせいですか?………下級である私が…母親だからですか………?」

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