亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
貴方、だから…?
ノアの言葉はレトにとってはあまりにも漠然とし過ぎていた。訳が分からない、と独り首を傾げるレト。
………それってどういう意味…?、と聞き返そうとしたレトよりも早く、ドールが口を挟む。彼女の声は、何故か困惑気味で、それでいて荒々しいものだった。
「……どういう事?………そんな事ってあるの?………そんな……そんな、馬鹿な事って…………………冗談にも程があるわ…!」
「………冗談?…勝ち気なお嬢さん………見ての通り、これが現実なのです。…これが、答えなのです」
「……何よそれ……これが、神様のやる事な訳?…だとしたら………何処まで、横暴なのよ…!」
「………ドール…?」
何故彼女が怒鳴り散らしているのか。二人が何を言っているのか。
全く、分からない。今、何が起きているのだろうか。これが、何を意味しているのか。
僕は、難しい事を考えるのは苦手だから。
全然分からない。分からないけれど。
こちらを見詰めてくるノアの眼差しが何故だかとても怖くて、言いようの無い不安が胸中を溢れ出ているのは確かだ。
ノアの口が開き、唇が動く。
困惑しきったレトに、ノアの声が襲い掛かる。
その声は、大きくもないのにこの広い謁見の間に響き渡る。
無機質な、言葉が。
鼓膜を、震わせた。
僕の中の、脆い何かを。
震わせた。
「―――次の王が貴方だと、言ったのです。レトバルディア=クウ」