亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
……何処か遠くを見る様な目でレトを見詰め、彼はにっこりと笑みを浮かべた。
「………立場は全く違うが、僕と君はその点、似ているね」
(………)
彼の言う事一つ一つが、自分の狭い世界には無かった事ばかりで………。
なんて……器の大きな人なんだろう。
自分には無い物ばかりを揃えた、輝いている人。
眩し過ぎて近寄れない臆病な自分がいるが………。
………羨ましい、と思う自分もいた。
ユノはにこにこしながら歩み寄り、ボーッと突っ立っているレトに向かって、その色白の小さな手を伸ばしてきた。
散々雪に突っ込んだ彼の手は、自分と同じで、かじかんで真っ赤になっていた。
「…改めようか。自己紹介だ」
ハッと我に返ったレトは、ちょっとビクビクしながらも、ユノの手をとって握手をした。
挨拶は身分の低い方からということを前提としているのか、彼はレトの言葉を笑顔で待っている。
「…………狩人の……レト。………誠名は…レトバルディア=クウ……」
「僕の名はユノ。誠名はユノマリアン=エス。……前国王…デイファレト王51世の孫にあたる………………次のこの国の、王だ」
その堂々とした物言いが、彼の王族としての誇……誰よりも高いプライドを現していた。
…まさか王様を護衛する事になるなんて。
未だに信じられない。