亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――レト、そろそろ移動だ」
答えようと口を開けた途端、低いザイの声がそれを阻んだ。
後ろにはサリッサも続き、二人共荷を背負っている。
子供二人が深雪の中で雪の塊を手に構えているのを見て……ザイは首を傾げた。
「………………二人で、何をやっているんだ?」
……え―っと、とレトはぼんやりしながら、この遊びの名称を思い出す。
「………………雪………………合………点………?」
「……………雪が、点……?」
静かに天然オーラを放つ親子を眺めながら、ユノは眉をひそめ、サリッサは苦笑した。
「………行き先は、『神託の柱』でよろしいか…?」
「……はい。お願いします」
レトはマントの内の武器の整理と確認をし、その様子を好奇心に満ち溢れた目で観察するユノの後ろで、大人二人は護衛内容の確認をしあっていた。
………聞き慣れぬ名称。…『神託の柱』。
「………『神託の柱』…?」
数本のナイフを腰のベルトに差し込みながら呟くと、傍らのユノがそれに答えてくれた。
「知らない?別名、『神声塔』。………王族が神への忠誠を誓う、祭礼をする場だよ。大昔は占いなんかもやっていたけれど、今はただの廃墟同然」
「………どうしてそんな所に行くの?」
わざわざそんな廃墟に行かなくても……と疑問に思うレトの前で、ユノはえっへんと胸を張って誇らしげに言った。
「夢の御告げだよ!……ついこの間、御告げがあったんだ!………………三大国の頂(いただき)に立つ王なる者は、我が言葉を受けるべし……ってね」