亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
初めて会った時の、あの。
…優しい、彼の。
―――僕は一体。
―――…一体、誰に。
再び、あの赤色がちらつき始めた瞳。
その目でもう一度、片割れの証石を見下ろして。
僕を、見上げて。
少しだけ。
「―――…」
少しだけ、悲しく。
「―――……ぁ…」
笑って、くれて。
『―――…僕は、ユノを王様にしたい』
―――僕は一体、誰にこの矢を向けている?
「あ゛ぁあああぁあああああぁぁ!!」
一筋の真っ白な光の線が、夜を裂いていった。
真っ直ぐに飛来したそれは、たくさんの重みを、例えようの無い悲しみを、埋められない虚無を宿して。
僕の手を、放れていった。
静寂を孕んでいた冷たい空気は、少年の悲痛な叫びと号泣を前に、身を潜めた。
その場に残ったのは、虚しさだけ。