亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
泣きたいのはこっちなのに。
メソメソ、メソメソ、そんなに泣いちゃって。
そんなんで、王様になれるのかな。
……僕の親友は、本当に不思議だなぁ。
同じ歳なのに、狩人で、強くて、化け物も人も簡単に倒してしまうのに。
臆病者で。
父親離れが出来ていなくて。
変なところが抜けていて。
物凄い天然で。
料理もまずいし。
妙に頑固者だし。
お人よし過ぎて。
馬鹿正直な。
泣き虫な、僕の、たった一人の。
最初で最後の。
僕の、親友。
親友、なんだ。
「………ほら………またいつも…の……無愛想、な、顔…………………笑え…っ…て…………言って…る…じゃないか……」
痛みが嘘みたいに引いていく。
段々と遠く、色も無くなっていく意識の中。
目を閉じれば、きっとお終い。
ゆっくりと目を閉じていく彼に、レトは精一杯の笑顔を向けた。
涙も拭っていない酷い顔は、きっとまともに笑えていない。
事実、ユノが暗闇に意識を投じる瞬間に見たのは…悲しい、とても悲しい笑顔だった。
笑顔になっていない、彼らしい不器用な笑み。
悲しみを滲ませた、笑顔。
底の見えない何処かへと、全てが持っていかれる。
その先が暗いのか、明るいのか、全く分からない。心地よい眠気に誘われる。
最後の呼吸は、酷く冷たい空気で。
深く息を吸い、ゆっくりと吐きながら……ユノは、子供らしい悪戯な苦笑を浮かべて。
「―――…下手くそ」