亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
天井の美しいステンドグラスから差し込む光は、月明かりとは全くの別物だった。
眩しい光。
一本の光の柱を、レトはぼんやりと眺めた。
…昔、あの光を父さんと一緒に見たことがある。
なんて眩しいのだろう。
なんて、神々しいのだろう。
「………何処もかしこも、忙しいわね…」
意識を取り戻したドールが、ノアに抱えられたまま光の柱を眩しそうに見上げて呟いた。
同じく見詰めるノアは、何とも言えない様な複雑な表情を浮かべていた。
「………ユノ……一緒に、玉座まで行こうよ。………約束、してたもんね…」
もう、自分を見てくれることはない。
自分を呼んでくれることはない。
冷たい、冷たいその身体をゆっくりと片腕で起こし、レトはふらつきながらも、前へ歩いた。
見えるのは、玉座。
たった一つ。
僕等が目指した、僕等の玉座。
僕等の、夢。
君の、夢。
一緒に走った夜。
一緒に語った星空の下。
一緒に眠った穴の中。
一緒に食べた美味しい御飯。
一緒に歩いた道。
一緒に見上げたお城。
一緒に。
一緒に。
これからも、一緒に。
「最初の一段目、登るよ」
…そう言って隣のユノを見遣れば。
―――いいよ。
…なんて。
そんな…嬉しそうな彼の声が、聞こえた気がした。
熱くなる目頭をそのままに、レトは不器用な笑みを、浮かべた。
きっとまた僕は、下手くそな笑顔なんだろうな。
ねぇ、ユノ。
「行くよ、せーのっ」