亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
レトは困惑しながら振り返ると、立ち尽くすザイと、少し悲しそうに微笑むサリッサが見えた。
レトを引っ張るユノの手は、放す気配は無い。
前を向いたまま、ユノが苛立った声でぼやくのが聞こえた。
「………どうして僕が……お母様なんかと…………………それに、死んだ狩人のためにも……?……………………………小さい事にこだわるなぁ……そんなの、僕の使命の前では何でもないのに…」
………苛立つユノからは笑顔は消えていた。彼の口からそんな言葉が出るとは………思ってもいなかった。
「………でも………………死んだ狩人は……一つしかない命の限りに…」
荒々しく引っ張られながら、レトは小さな声で話し掛けた。
………その直後、ユノの不機嫌な顔が、こちらに振り返った。
………ビクリ、と身体が震えた。
「………………だから、何だって言うんだい?………使命か何か知らないけど……狩人の使命なんか………小さいよ。そうだろう?レト。狩人の君にこんな事を言うのは、失言かもしれないが………君が狩人だからこそ言うんだ。…………………………あの狩人は、運が無かっただけさ」
「………」
厚い曇り空の中で日が高くなり始めると、ちらりちらりと、真っ白な結晶が、再び舞い始めた。
純白の世界にまた、白が加えられていく。
純粋な、生まれたばかりの………雪の赤子が。
今夜も、吹雪だろうか。