亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
3.放たれた牙、探る影達
生まれた時から、皆同じ事を言うんだ。
最低でも、一日十回。
最初はよく分からなかったけれど、夢の御告げを見る様になってから理解しだした。
―――貴方様は次の王。
―――この国を治める事が出来る、唯一の御方。
―――我々民の希望なのです。
そうか。
僕は、選ばれた者なんだ。
次の偉大なる王なんだ。
亡くなられたお父様は、王族だったのか。
………僕は、王だ。
王になるために、生を受けたんだ。
王になるため、だけに。
…幼い僕でも、分かる。
生まれた時から……ちやほやと世話を焼いてくる、貴族の者達は……。
皆、怪しい光を瞳に宿している。
君等の魂胆は、手にとる様に分かるよ。
僕が王になった暁には……おこぼれを頂戴しようというものだろう…?
僕は君等に笑顔を向けていたけど……僕が従順で素直で、親切だと思い込んでいる。
幼子だからって……甘く考えちゃいけないよ。子供は無邪気な顔の裏で、都合の良い先の未来を見据えてるんだ。
君等の思い通りにはさせない。
僕は、信頼出来る人間しか側に置かないよ。
でもね…なかなかいないんだ。
僕の味方は、一体何処にいるんだろう。
………親友、なんて存在が………欲しくて堪らないんだ。