亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
ジリジリと焦げ付く様な、暑い日差しが差し込む廊下。
前も後ろも一本道のそこを、ズラリと並んだ兵士……そしてその群の中央で、数本の槍を突き付けられながらも平然と歩く、人影。
「―――」
厳重な警戒体制で包囲する中、先頭を歩くウルガはちらりと振り返った。
まるで罪人同然の扱いを受けている、マントで全身を覆った人物は、歩調も乱さず、前を見据えたままだ。
大柄な自分から見れば、どの他人も小さく見えるが………………この人物は、遥かに小さい。
背丈も肩幅も、手足も何もかも………小さい。
周りを囲む兵士達から見ても、この中で一番……小さい。
…………子供…。
少し歩いて行くと、長い廊下の先に、巨大な扉があった。
………謁見の間だ。
本の数日前も、こんな風に招かれざる客人をここまで案内した。
その時の記憶が、脳裏を掠める。
「………着いたぞ」
ウルガはそう言って、重い扉を開けさせた。
重苦しい音が鳴り響く中、徐々に広がっていく隙間から広大な部屋の景色が見えてきた。
「………前に進め」
完全に扉が開いても、なかなか動こうとしない目下の小さな人物。
ウルガは少々荒々しく腕を引っ張った。
……ウルガの大きな手で掴めば折れてしまいそうな華奢な腕。
グッと引っ張ると、その腕はウルガの手を思い切り払い除け………。
………ペッ、と顔に唾を吐かれた。
「………」
無言でウルガは唾を拭いながら、小さな柄の悪い人物を睨んだ。