亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――…ふむ……………それはそれで面白いのですが………残念な事に、ただの長旅に寄る疲労でお休みなだけなんですよ。………良いですね!この国は冗談が通じない方ばかりで………。ユニークな方は大好きですよ!!」
「あたしはあんたが死ぬ程嫌いよ。好かれる前に、即刻あんたを殺るわ」
不気味な笑みを浮かべてはしゃぐケインツェルを、物騒な言葉で切り捨てた。
この男よりも、まだバリアン王の方がマシ。
「………相変わらず血の気の多いお嬢さんですねえ……。…フードを取ったらどうです?……………今日は貴女に、良い話を聞かせたくて招いたんですよ…」
「………良い話?……それはウチの長を…」
マントから伸びた華奢な手が、フードを掴み………バサリと後ろに追いやった。
「―――…この汚い城から、解放することかしら?」
明るい日差しを迎えたその姿は………………………子供。…………………しかも、少女だった。
まだ成人にもなっていない幼い少女。
赤褐色…よりも薄い、どちらかと言えば色白の肌。
赤みがかった茶色の髪は高い位置で結い上げられている。
風でサラサラと揺れる前髪の隙間からは、やや釣り目の……気の強そうな、円らなオレンジの瞳が、ケインツェルを憎々しげに睨み付けていた。
「………ドール殿……いえ、ドール嬢。……………またまた残念なことに……貴女の御父上の解放は、許されていないのですよ」
ククク、とケインツェルは嫌らしい笑みを浮かべて腰を上げた。
背丈の低いドールを、ケインツェルはにんまりとした不気味な目付きで見下ろす。