亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
臆病な人間と化していたバリアン王にとって幸運な事に……。
………ある時、反国家組織である賊のリーダー………長である男を、偶然にも捕らえる事が出来たのだ。
賊側は、長を返す様にと要求してきた。
……長を解放して欲しければ、賊を解散させよ……という王の命に対して、賊は…。
………長を生きて返さねば、即刻城を襲撃する………と反発してきた。
こちらには、長の生死を確認出来る術がある。
……隠れて殺してみろ………直ぐにでも戦火を撒いてやる。
何と言っても、賊側は引かなかった。
怒り狂ったバリアン王は長の男を殺す様にと言ったが、まだ利用価値があるかもしれない、とケインツェルが止めたのだ。
今、長の代わりに賊を治めているのが、長の一人娘である……まだ12の少女。
……ドール=ラトゥール。
大勢の人間を付き従える長に似て、勝ち気で、真直ぐな信念を持つ少女………。
………こんな小娘に怯えるこの国家は、もう最初から滅んでいるも同然ではないか。
兵士達を前に平然と……しかも小馬鹿にする様に笑う少女を見ながら、ウルガは奥歯を噛み締めた。
……この小娘に苛立っているのではない。
この国、そのものにだ。
「ドール嬢、これは失礼致しました。………勿体振るのは止めておきましょう…………………確かに…貴女の御父上の解放の話ではありません。……………………御父上を解放……出来るかもしれない…話ですよ。……フフフフフ!!」