亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
4.宿命という名の
時々、夢を見るの。
懐かしい…色褪せてしまった夢だけれど……とても心地良くて、心穏やかで………少し、悲しくなるのよ。
その夢はいつも…大昔の光景。
まだちゃんと春があった時の景色だったわ。
……花が咲き乱れていて、静かで…。
………まだ私が幼い少女だった頃の…。
………きらびやかな衣装を着た王様が、花を見ながら廊下を通り過ぎて行くの。
……車椅子を進めて、私は陛下が見える所まで行って…。
陛下は、私の前を歩いて行くのよ。
とても威厳高い…素敵な方でね……幼い私は目を輝かせて陛下を見上げるの。
………そのすぐ後ろを、陛下の御付きの、魔の者が歩いて行くの。
……緑色の長い髪のその人は、魔の者なのに妙に人懐っこくて……。
小さな私を見つけると、必ず頭を撫でていったわ。
陛下とあの魔の者は、いつも一緒。
羨ましいくらい、とても仲が良くて。
………私はそんな二人を見るのが、大好きだったわ。
………頑張って、車椅子で追い掛けたわ。
………あれから、一体どれ位経ったのかしら。
もう…あの頃の様に、私はあの二人を追い掛けられないわ。
誰かに車椅子を押してもらわないと、すぐ疲れてしまうの。
………そう、もうね………追い掛けられないの。
………だってあの二人はもう……一緒にはいないんだもの。
お城は今もあるけれど。
もう、いないの。