亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「…こっちの荷物にも確か入ってるよ。………袋の底に隠してる」

「………だから多いって……………………………………」

溜め息を吐きながら、ユノはレトが隅に置いた荷物に視線を移し…………………そのまま固まった。



……急に静かになった王子様に気付き、レトはナイフを磨く手を止めた。




綺麗に整った眉をひそめ、一点を見詰めたまま硬直するユノ。

そんな彼をぼんやりと眺め、どうしたの?、と声を掛けようかとちょっと悩んだ末……………レトは再び無言でナイフを磨き始めた。



数秒の間を置いて……やや困惑したユノの声が、隣りから聞こえてくる。








「ねぇ、レト……………………動くナイフってあるの…?」

「………………無いと…思う」

「いや、普通に考えたらそうだけど。………でも君の荷物………動いてるんだけど……」

「…………荷物は…動かないと思う」

「レト、こっちを見て話しなよ」



やや不機嫌なユノに言われるがまま、レトは眠そうな半開きの両眼を、荷物にゆっくりと移した。








部屋の隅の方に追いやった、ボロボロの荷袋。
ランプの明かりしかない暗がりの中で、それは…………もぞもぞと、中から何かが……外側の生地を押し上げている。

















(………)






















「……………うん。…僕の荷物………動いてる…ね」

「そんな生気の無い反応は要らないよ。もっと他に言う事無いのかい?」
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