亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
あまりにも素っ気無いレトのリアクションに苛立つ反面呆れながらも、ユノは謎の動く荷物に手を伸ばした。


………荷袋の紐の端をグイッと引っ張り、二人で囲んでジッと見下した。


………大きく膨らんだ荷袋は、左右にもぞもぞと動き続ける。

…荷袋は普段あまり物を詰めていなかった筈だが。

はて。…………こんな大きな物……入れただろうか。
………動いているし。

………何か…獣か虫の類いが入り込んだか。




……小さくても、凶暴な獣はたくさんいる。迂闊に触らない方がいい。
………ここはとりあえず…父さんを呼んだ方が良さそうだ。




レトは父を呼ぼうと振り返り、口を開いた。






………が。


















突如、第三者によってその小さな口に藁の塊を突っ込まれ、乱暴に頭を押さえ付けられた。

「…駄目!!………ザイに教えたら絶対駄目だよ!!」

すぐ傍らで、ユノが冷や汗をかきながら自分を床に押さえ付けていた。


ユノの顔は、新しい玩具を見つけた子供の様に、好奇心できらきらと輝いている。

……でも王子様、やる事が少し酷過ぎやしませんか。




床に突っ伏したまま無表情で、一本一本地道に口の中の藁を取っていくレト。

部屋の隅に小さな塊をペッと吐き捨てた。





「………ザイに教えたりなんかしたら、あれだよ…………大して確かめもせずに…『―――危険だ』とか何とか言ってあっという間に一刀両断…に、決まってる……」





…なんて横暴な…とか思ったが……。




…いや………有り得る。



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