亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「……危険なものって分かり次第、潰しちゃえば良いんだからさ。……分かるまでは絶対手出ししちゃ駄目。いいね?……ほら、そんな物騒なのちらつかせないで」
いつ何が起きても対応出来る様に、動く物体の真上で短剣を構えてスタンバイしていたレトは、素直に剣を下ろした。
「……よし。じゃあ…せーので袋をひっくり返すから。いくよ……」
首を傾げるレトの前で、ユノはワクワクしながら荷袋の端を掴んだ。
「………せーのっ…」
「一、二の、三じゃないの?」
「掛け声なんてどうでもいいよ!………あ」
グイッと袋の底を上げた途端、レトが本当にどうでもいい質問をしてきたため、手元が狂った。
二人の真ん中に落とすつもりだったそれは、ボテッ…とレトの傍らに落ちた。
その反動で、動く物体は荷袋から放り出され………床に突いていたレトの手元で、止まった。
視界に飛び込んできたのは、子供の頭くらいの大きさの……砕けた石。
グラグラと動く石。
………石………?
散々亀裂が生じている、丸いツルツルとした石に触れ、思い切ってひっくり返してみると………。
………空洞のある石。
いや、これは割れた卵であって………その窪んだ小さな空間にピッタリと収まっていたのは………。
「………」
「―――」
「―――チチチチチ」
潤んだ円らな瞳でレトを見上げる、黒い小さな小さな雛が、そこにいた。