亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………生まれたばかりらしい雛。
まだ生暖かく湿っている二つの翼をパタパタと動かしながら、そんなに固くない嘴で身体を支え、細い二本の足で立ち上がろうとしていた。
大きな円らな瞳はパチパチと瞬きを繰り返し、唖然と見下ろすレトをじっと見詰めていた。
「………汚い鳥…」
可愛らしい、黒い雛を見下ろすユノの第一声が、それだった。
チチチ…と、か細い鳴き声を上げて、雛は何とか二本足で立ち上がった。
しかし、直ぐにふらつき始める。
…ゴミか何かを見る様な目で見下ろしていたユノだったが、その瞳は直ぐにまた好奇心に満ち溢れた。
「……黒ずんでて汚いけど…………凄い…雛なんて初めて見たよ。………レト、卵なんか持っていたんだね…!育てていたのかい?」
「………っちゃった………」
「……………何…?」
パッと振り返ったユノの目線の先には………………レト…ですか?
ガクッと両手を床に突き、暗い負のオーラを放ちながらうなだれる少年レト。
よく分からないが……落ち込んでいる。物凄く落ち込んでいる。
俯いたレトの顔の真下で、チチチ、と雛が首を傾げて顔を覗き込んでいた。
「………孵っちゃった………………………………父さん……父さん……」
力無く立ち上がり、フラフラとしたおぼつかない足取りでレトは父の元へ歩み寄る。
そんなレトを、雛もフラフラしながら追い掛けて行った。
いつもとは明らかにおかしい、近寄ってくる息子を見て………無言で剣を磨いていたザイは顔をしかめた。
「……………どうした?……何が……」
「チチチ、チチチチチ」
………。