亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

息子の後ろから、何か小さいのがヨチヨチと続いてやってくる。


………視界の隅で動くそれは、途中で転び、小さく一回転した。



レトはザイの前に倒れ込む様に膝を突き、ガクッと再びうなだれた。

「………………前に狩ったカーネリアンの卵が……孵っちゃった…」












……以前コム爺の依頼を受けた際に狩った、怪鳥カーネリアン。

雌のカーネリアンをかっさばいていた時に偶然見つけた卵。
青から真っ白になるまで熟させた卵は、それはそれはもう栄養価も高く、美味である高級食材として有名だった………のに。








「チチチチチチ!」






















あんなに楽しみにしていた卵が、今は独りで立派に成長し、餌をくれと言わんばかりにレトの服の端を咥えて引っ張っていた。







そんなカーネリアンの雛と、極限まで落ち込む息子を交互に見ながら、ザイは年寄り臭い思い溜め息を吐いた。







「………………熟し過ぎだ。………卵の事……忘れていただろう…」

「………………………全然頭に無かった…」

「………」









荷袋にあんな大きな卵が入っていたのに………正直、本当に忘れていた。

その存在に気付いてもいなかった。



よく記憶を辿って行けば……思い当たる節は何度かあったのだ。




………度々遭遇する獣とのちょっとした戦闘で、無意識に荷袋で頭を殴り付けたりして怯ませていたのだが………怯ませるどころか、何故か即死することがあった。




………荷袋の中の卵を、レトは知らず知らずの内に、便利な鈍器として使っていたのだ。
と言うか、そんな事してよく割れなかったものだ。
< 203 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop