亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………大丈夫だ。今度は熟し過ぎて失敗、という事態になる筈が無い。………むしろどんどん熟せ。………この食材の旨さは、私達の忍耐の長さで決まる。長ければ長い程………………良い」
「…………………………………分かった」
「………問題は、逃がさない事だ。………レト、お前が責任持って管理しろ。……………………………死ぬ気で逃がすな…」
「あそこの親子、なんか嫌だ。なんか飢えてるよ?可哀相なくらい」
ユノはサリッサの横に腰掛け、陰謀渦巻く食材会議を後ろから眺めて言った。
生きとし生けるものを尊重し、一つの神として崇める狩人だが……………その暗い本性を見てしまった気がする。
ユノは軽いカルチャーショックを受けていた。
「………もう、寝ましょうか」と、冷や汗を拭い、サリッサは我先にとマントを羽織って横になった。
チチチ、と鳴きながらレトに甘えてくる雛(食材)を、まだじっと見下ろしているレトとザイの輪に、何気なくユノも入った。
ザイは腕を組み、大真面目な険しい表情で呟いた。
「………幸いにも、どうやらこれは、レトを親と思っている様だな………。………最初に目が合ったのか?」
「………ひっくり返した時………そういえば合った」
雛(食材)はザイやユノには目もくれず、レト一人に擦り寄り、突っ突いていた。
小指を噛まれたレトは、無言でそのまま手を上げていく。
………手の上昇に伴い、小指を咥えた雛(食材)も嘴を放そうとせず、そのまま上昇して宙ブラリの状態となった。