亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………それはしめた。………カーネリアンの雛は、飛べる様になるまで母親に身を守ってもらわねばならない。………親が何処に行こうと、離れる事無くずっとついて来る…」
「………………じゃあ、逃げる事は無いんだね………」
雛(食材)がぶら下がったまま、レトはヒラヒラと手を振ると、雛(食材)の小さな身体はブラブラと左右に揺れた。
「………飛べる様になるまで、どの位かかるの…?」
「………その雛による。早い奴は一ヶ月そこら。遅いのは一年はかかる。………………飛べる様になる時、カーネリアンは雛の姿から一変して成鳥へと変わるらしい。何の前触れも無く、な」
「…………こんな小さいのが、急に5メートル近くにもなるの…?」
ブンッ…とレトは力を込めて手を振った途端、雛(食材)はビュッと風を切り、壁にぶち当たった。…コキッとか、変な音がした。
すぐ隣りで、ええええーっ!?、と無言の絶叫を上げるユノ。
雛とレトを交互に忙しなく見る。
可愛らしい雛に対してとんでもない事をした筈のレトは、ケロッとした表情だ。
「……らしいが、その成長になる瞬間はあまり目撃されていない。カーネリアン自体、生け捕りにされた事がないに加え、その用心深さから滅多にお目にかかれない。………その生態ははっきりと分かっていないんだ……」
「………ふーん………………あ、戻ってきた」
母親であるレトに半虐待…いや、虐待レベルの事をされ、どうかしたら死んでいたかもしれない雛だったが、何事も無かったかの様に甘え声を散らしながら、ヨチヨチと確かな足取りで生還した。