亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
うーん…と腕を組んでしばし考え込んでいたユノだったが、結局はその名前で良しとした。
これ以上レトに求めても、きっと無駄だと確信した故の決断だった。
「……ま、良いだろう。…じゃあ、この汚い鳥の名前は、今からアルバスだね。多分君は短い生涯になるだろうけど、よろしく」
内心、哀れな鳥だ…とか思うユノだが、当のアルバスは無邪気にレトの膝を登っている。
レトの膝の上に登ったアルバスは、自由気ままにパタパタと羽を動かした。
「………………食材と一緒に歩いたり寝たりするんだね……………………………………………………………堪えられるかな…」
最後の言葉を、レトは明後日の方向を見詰めながらボソリと小さく呟いた。
古い納屋の壁の隙間からは、冷たい吹雪の微かな吐息が入ってきていた。
その辺にこんもりとつまれている藁の束で隙間を塞ぎ、そろそろ就寝の準備に入ることにした。
冷たい石盤で出来た床で小さく燃える頼りない焚き火は、音も無く、静かに赤々と輝いていた。
暖かい焚き火の側には、サリッサとユノが横になり、ザイとレトは納屋の扉を挟む様に壁に寄り掛かって眠る。
………筈だったのだが、薄い毛布を抱えたユノが笑顔でレトの元に寄って来た。
「隣りで一緒に寝てもいいかい?………独りで寝転がるのは、落ち着かないんだ…」
そう言って、答えも聞かずに隣りに腰を下ろす勝手なユノに、パチパチと瞬きを繰り返して驚きながらも、レトは黙って頷いた。
「…………………うん。………良いけど……………………お母さんと寝た方が落ち着かない…?」
自分と一緒に眠るより、母親との方が安心出来ると思うのだが…。