亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
そんな素朴な疑問に対し、ユノは………。
………あからさまに顔をしかめた。
「………お母様とは、絶対に嫌だ。…前にも同じ様な事を言ったけれどね、レト。…………………………お母様と同じっていうのは、嫌気がさすんだよ…」
一瞬で不機嫌になり悪態を吐くユノは、さっさと毛布を広げ、レトの隣りで毛布に顔を埋めてしまった。
………そんな傍らのユノとサリッサを交互に見詰め、ちょっと首を傾げた後、レトも身体を縮こませてマントに顔を埋めた。
ヨチヨチと寄って来たアルバスは、二人の間に小さな身体を埋め、羽を畳んで静かに眠りに入った。
ものの数分で、納屋の中に寝息が聞こえ始めた。
用心深いレトも最初の内はすぐには寝付けないのだが、その内、同じ様に寝息を立て始めた。
………消えそうで消えない、薄明かりを放ち続ける焚き火。
時々、パキッと炭化した枝が折れる音が狭い室内に響き渡るが、ヒューヒュー…という外の吹雪の音色が、すぐにかき消してしまった。
―――寝ずの番をするザイは一人、焚き火の光を見詰め、吹雪の声を聞いていた。
…何も変わらないし、止む気配の無い吹雪きの歌声。
飽きずにじっと耳を澄ませていたザイは、ふと………その場で、立ち上がった。
音を立てない様にマントを羽織り直し、ちらりと眠るレトを見下した後………。
―――………そっと、独り……………納屋を出た。