亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
陛下。
陛下。
ほら、あれを御覧になって下さい。
…綺麗な虹です。
不思議ですね。
雨なんて降るどころか、雲さえないのに。
ずっと晴れが続いているのに。
虹が出るなんて。
もしかしたら、あの虹は蜃気楼でしょうか。
三つの大陸の真ん中にある、海という場所の景色でしょうか。
海とはどんな場所なのでしょうね。
行ってみたいですが………やはりわたくしはこの国が一番好きです。
砂だらけだし、熱いですが………ここはわたくしの陛下の国で御座います。
陛下のお側で見る事が出来る、陛下の国で御座います。
陛下がいなければ、わたくしにとってこの国は何でもありません。
陛下がいてこその、国。
わたくしが命に代えて御守りする、誇り高き国。
わたくしは幸せものです。
陛下の付き人であること………………素晴らしい宿命で御座います。
………あとは、陛下が早く王妃様を迎えてくれる事がわたくしの願いです。
見目麗しい方々はたくさんいらっしゃいますのに。
何故陛下は王妃を迎えられないのですか。
……人間というのは厄介ですね。わたくしにはさっぱり分かりません。
陛下。
陛下。
次のデイファレトへの出陣は、わたくしもお供致します。
置いて行かないで下さい。
わたくしは、陛下の魔の者なのですから。
陛下を御守りするのが、わたくしの義務なのですから。
――陛下。