亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
何も答えない、答える筈もない首飾りを、皮膚に食い込むくらい強く握り締め…。
「………すまない……すまない…………テナ………わしを…許してくれ……………テナ………テナ………」
緑色の表面を指の腹で何度も何度も撫でながら。
「…………今度は………わしが守る番じゃ…………なぁ……テナ………お前は少し休みなさい………………今度こそ…わしの側から離れるでないぞ……………………………今度は…………わしが……」
………老王は肩を震わせて………………………………嗚咽を漏らした。
目頭が熱くなろうが、零れた温いものがしわだらけの顔を汚そうが、絨毯に染みを作ろうが。
何だろうが。
どうだっていい。
「………わしが……テナ。………テナ…。………………………………………何故…………………………死んだ……勝手に…………勝手……に…………」
―――瞼を閉じれば、懐かしい姿がそこにある。
あれは、笑っている。
普通の人間の様に、笑っている。
テナ、と名前を呼べば………振り返ってくれる。
そしてあれは急に………いなくなる。
呼んでも呼んでも、あれは返事をしない。
背中に吹き付ける熱風を感じて。
そこか…?、と振り返る。
振り返った先には……。
火の海と、地に横たわる真っ赤な、テナ。