亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~




何も答えない、答える筈もない首飾りを、皮膚に食い込むくらい強く握り締め…。










「………すまない……すまない…………テナ………わしを…許してくれ……………テナ………テナ………」










緑色の表面を指の腹で何度も何度も撫でながら。








「…………今度は………わしが守る番じゃ…………なぁ……テナ………お前は少し休みなさい………………今度こそ…わしの側から離れるでないぞ……………………………今度は…………わしが……」















………老王は肩を震わせて………………………………嗚咽を漏らした。





目頭が熱くなろうが、零れた温いものがしわだらけの顔を汚そうが、絨毯に染みを作ろうが。


何だろうが。












どうだっていい。














「………わしが……テナ。………テナ…。………………………………………何故…………………………死んだ……勝手に…………勝手……に…………」
















―――瞼を閉じれば、懐かしい姿がそこにある。







あれは、笑っている。






普通の人間の様に、笑っている。












テナ、と名前を呼べば………振り返ってくれる。
















そしてあれは急に………いなくなる。








呼んでも呼んでも、あれは返事をしない。
















背中に吹き付ける熱風を感じて。



そこか…?、と振り返る。














振り返った先には……。






火の海と、地に横たわる真っ赤な、テナ。





< 214 / 1,521 >

この作品をシェア

pagetop