亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
…度々見る悪夢は、いつもこんなもの。
氷の城に広がる、火の大地。
………見たくもない凄惨な光景。
その、奥。
いつからいたのか。
炎の中で佇む、一本の人影。
笑っている。
………あれこそが、悪夢。
悪夢の根源。
笑っている。
動かぬテナを見せ付ける様に、こちらを見詰めて。
笑って、いる。
テナを殺した、化け物。
化け物。
「………テナ………何故…わしの……わしの側に…おらぬ…………何故……何も…言わ…な……い…………」
絨毯に額を押し付けて。
歯を食いしばって。
首飾りを胸に抱き締めて。
ただの人間。
王という神々しさの欠片も無く。
ただの人間同様に。
老人は、咽び泣いた。