亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~

「………父上も、まだまだ現役の国王様だった、という訳か……」

ハラリと頁を捲ると、そこには、鎧に身を包んだ兵士達が剣を手に巨大な獣に切り込む挿絵があった。

所々虫に食われて穴が開いている、古い古いバリアンの歴史書。


この国の栄華という栄華は、その殆どが戦勝であるらしい。

歴史書に連なる文字は、どれも『戦争』が必ず記されている。









………戦争大国、とは…よく言ったものだ。

今の国王陛下……我が父上で、その名も廃れるだろうと思っていたのだが。









「………デイファレトの王族の抹殺……ね。………さすが父上。腐ってもバリアンの非道なる血は通っておられる様だ……」


分厚い歴史書を足元に放り投げ、アイラは髪を弄りながら嘲笑を浮かべた。



「………非道なる、とはまた…。………御自分の身体にも通っているではありませんか」

放り出された歴史書を拾い、カイはやれやれと肩を竦めて見せる。




反国家組織の長であるドール嬢との、決して穏やかでない密会を全て盗聴してきたカイは、事細く主人のアイラに報せた。





国王陛下が、デイファレトを本格的に根っこから潰そうとしている事。

そのため、反国家組織の人間を使って、行方不明のデイファレトの王族を暗殺しようとしている事。


………そして、あの気の強いドール嬢をうんと言わせた……そこまでしなければいけない、理由。














「………不可解だ。………実に、不可解だよ…カイ……」

「………何がですか…?」

「………その深刻な理由が、さ。………ま、いいか。知った事ではない……」

何やら意味深な台詞を吐き、アイラは横になった。
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