亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~















―――ギュッと、心臓を掴まれた様に……胸の辺りが苦しくなった。

一瞬意識が遠のいた後、奇妙な脱力感が全身を襲い、力が入らなくなった足はガクッと地に膝を突いた。





うまくバランスがとれなくった身体を、タイミング良く第三者の小さな手が支えてくれた。







「………大丈夫?」


すぐ傍らから、心配そうにレトが覗き込んだ。
「チチチ」とアルバスが独り言を言いながら脇を通り過ぎて行く。











神声塔の最上階を目指すべく、永遠と続いていそうな階段に足を掛けた途端…だった。


「………大丈夫だよ……行こう」

突如襲ってきた胸騒ぎを強引に無視し、ユノはレトの手に引かれて何とか立ち上がった。




「………何だか…落ち着かない……」

ユノはポツリとそう呟き、キョロキョロと辺りを見回した。

しかし、その元凶らしきものは何処にも見当たらない。



……何だろう?このざわめきは。………寒気に似たこの震えは。




(………………あっちから…感じる…)


粉雪が入り込む吹き抜けに、ユノは視線を移した。

方角は、真北。
………城がある方向だ。

……見渡すその向こうの景色は真っ白で、何も無い。何も見えないが…………何かある。何か……感じるのだ。

強力な………何かを。




僕だけが感じられる………何か。















……じっと真北の方角を見詰めたまま動かないユノ。レトは首を傾げ、彼と同じ様に真北の方を見詰めた。





吹雪で白く霞んでいて、山も何も見えない。







だが……。
















「………雪の精が笑ってる」
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