亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………え?…何て?」
不可思議な言葉を吐いたレトに、ユノは顔を向けた。
自分と同じものでなくても、彼も何かしら感じ取っているのだろうか。
「………雪の精がね、何だか………笑ってるみたい。………………いつもは静かなんだけど」
「…雪の精?」
「………………うん。………………見えないけど………聞こえるんだ………昔から」
二人の後ろに続いていたザイとサリッサ。
妙な事を言い出すレトに、サリッサは首を傾げた。
「………………雪の精…とは…何ですか?」
その問いに、ザイが静かに答える。
「………我等狩人の世界では……創造神アレスの他に自然にも神がいると言い伝えられている。………雪の神、つまり雪の精霊もその中に含まれるのです。………本当にいるのかは分からないが………………レトにはその存在が、分かる様でな…」
………幼い幼い…赤ん坊の頃からそうだった。
何も無い所に手を伸ばしたり、空を見上げながら空を掴んだり、意味の分からない言葉を連呼したり。
………まるで、自分以外の他の何かがレトの周りにいて………あやしている様な……そんな光景だった。
…レトは、不思議な子だ。
何か見えていたのかもしれないが、今は何も見えないし、昔の事は覚えてもいない様だった。
ただ………聞こえるのだそうだ。
その様々な精霊の声が。言葉が。
「………その雪の精…何で笑っているの?」
「………分からない。面白い事でもあったのかな………………まだ赤ん坊みたいだから………話せないみたい……」