亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「―――好きにしなさい」
…途端、真下の部屋から、何の前触れも無く、ザイの低い声が聞こえてきた。
どうやら話を全て聞かれていたらしい。……が、あの厳格なザイが言う台詞とは思えなかった。
レトは驚き、ザイに聞き返そうと吹き抜けの窓を覗き込もうとしたが、再び投げ掛けられた父の言葉が、前を遮った。
「………レト、王子はお前に言っているのだ。………私の意見を聞く必要は全く無い。………私は、構わない…」
……静かな低い声はそれ以上は何も続かなかった。
「…良いのですか?」というサリッサの声が、後から聞こえてきた。
………何だか脱力してしまった様に、レトはのろのろと身体を起こし………ユノに、向き直った。
真剣な面持ちで、黙って答えを待っているユノを前にしながら………レトは、深い息を吐いた。
………そして、何故か自然と、口元が緩んだ気がした。
あ、僕………今。
……笑ったのかな。
ちゃんと、笑えたかな。
「………僕もね………ユノにお願いがある。……………………………この旅に、僕も一緒につれて行って……」
……そう答えるや否や、パッとユノの表情が豹変した。
呆気にとられた様な表情から、また更に一変し………見る見る内に、満面の笑みの明るさが宿っていく。
「……本当に…いいのかい?」
「………うん。……………………………………友達、だから………」