亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
義務だから、とか。
仕事だから、とか。
そうしなければいけないから、とか。
そんな理由じゃないんだ。
僕が、行きたいから。
一緒に、彼と一緒に。
こんな僕を…頼ってくれる彼と一緒に。
友達と、一緒に。
僕が、守ってあげたいから。
頼りないかもしれないけれど、弱いかもしれないけれど、臆病かもしれないけれど。
それでも、僕は。
僕なりに、精一杯。
「………そうだ、契約じゃないけれど………その印として証石みたいなものを分け合おうよ!」
「………うん。………でも……僕何も持ってない…」
地上に降りて石でも拾ってこようか……いや、その辺の石など何だか味気無い。
………獣の牙などを折って持って来ればよかったな…。
どうしよう…と独り悩んでいるレトの前で、ユノは懐から何やら小さな物を取り出した。
二人の間に置かれたそれは、小さな白い物体。
………石?……いや……牙……?………だが、表面には不思議な模様が入っている。
……これが何なのか分からず、答えを求める様にユノを見やると、彼は得意げに言った。
「…これはね、貝殻だよ」
「………カイガラ…?」
「そう。海にしかない貴重なものなんだって!『嵐』が起こった時に、極稀に風に飛ばされて来るらしいよ」
「……………ウミ…って何?」
ユノの口から出て来るのは、聞き慣れない言葉ばかりだった。
はて、ウミとは何なのだろう?