亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~



こんな残忍な殺し方は見た事が無い……と言いたい所だが、それはこのデイファレトに来る前までの話だ。



この雪国に忍び込んでからは、目を見張る様な…思わず顔をしかめてしまう様な死体を幾つも見ている。
どれも獣に襲われたものではないのだ。


立ち寄った街々で聞いた話によると、それらの死体は全て……『狩人』と呼ばれる、街の民とは異なる者達の手によるものだとか。



街の外の民である彼等は、このデイファレトの自然界そのものと共存しており、創造神アレス以外の神々を敬い、慈しんでいる。


彼等の生活は極めて野生的で、『狩人』という戦士の誇りを持っている。
それ故、狩人は皆老若男女問わず、戦闘能力が並外れて高い。



凶暴な獣と互角…もしくはそれ以上の力を持つ彼等は、生半可な殺し方はしない。

人間を木偶の坊か何かとしか見ていないのだ。




その振り下ろす刃には、慈悲も何も無いという。








………そんな狩人とかいうのと関わるなど御免だ…と、イブとリストは避ける様に旅をしていたが………その彼等が殺った形跡とは、ちょくちょく遭遇する。







そして……こうやって寒さに耐えながらもようやく辿り着いた、と喜びながら丘の上の神声塔を前にして…………………また、見つけてしまった。












神声塔がある丘の手前の、この深い谷。





目的地のすぐ側に死体だなんて…………何だか嫌な予感がする。



リストもイブ同様、白く濁った瞳に変え、谷底の無惨な死体を見下ろした。


「………………そんなにまだ凍っていないな……喰い荒らされた跡も……まだ、無い…」

……比較的、新しい死体だ。しかも…。
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