亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………………致命傷となっている傷はどれも……小さな無数の穴…………………………弓、だな…」
「弓って狩人じゃん!?嫌!!嫌だぁ―!!嫌な予感的中!!何よそれ!野蛮人がついさっきまでいたって言うの!?あああ―なんかもっとややこしいことになりそうな気がする!!」
………野獣フェーラのお前が野蛮人とか言うか、と内心突っ込むリストは喚くイブを無視して、谷底から丘の上に立つ高い高い神声塔を見上げた。
……昨夜だっただろうか。
この神声塔から、比較的大きな白の魔術が放出されているのを二人は感じ取っていた。
………もしや、神声塔での御告げではないか。
そして来てみれば……やはり。
………ここに来るまでの洞窟内や、塔周辺に魔術痕があったのだ。
それらは全て、王であるローアンが発動させる際に感じる、白の魔術と酷似したものであった。
………御告げを受けていない王族が、もしかしたら城ではなく神声塔に行くかもしれない…という予想は、当たっていたのだ。
………だが、一足遅かったらしい。
しかもこの辺りで一騒動あった様だ。
痕跡は普通の人間では見破れない程上手く隠されているが、二人には分かる。
「………ここで何かしら、一騒動あった。………襲われたんだろうな。………そして何とか、撃退した。……返り討ちにあったのが、谷底のあの二人の死体。そして撃退したのが………殺し方からすると……狩人。………と、いうことは…………………………………………王族には、狩人が付いている…?」
「……………最悪…」
数々の痕跡から導き出した答えにうなだれるイブ。