亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
聞いた限りでは最悪の印象しかないその狩人とやらが、捜索している王族と一緒となると………そう、易々とは見つからないだろう。
しかも狩人は余所者を忌み嫌うと聞いた。
………狩人は殺しのプロ。気配を消すなどちょろいものだろう。
…たとえ捜し当てたとしても、余所者で何者なのかも分からない自分達が不用意に近付けば、問答無用で噛み付かれるに違いない。
ガブガブと。
「………そりゃあ護衛を付けるのは分かるよ?高貴な王族様だもん。………でも…だからって、よりによって狩人を雇わなくったって………………ああ、暖かいお城に帰りたい……そして隊長に撫でてもらうの…」
「下らない事ほざいている暇があったら働けよ、陛下至上主義の馬鹿が。……よし、とりあえず…もう少し他に痕跡が無いか確かめるぞ。城へのルートは一つじゃないからな……どの道を行ったのかしらべないと…」
「………へーい……気が乗らないなぁ……」
ブツブツと文句を言うイブを傍目に、リストは背後に広がる森の方に後退し、助走をつけて谷の手前で大地を蹴った。
谷の巨大な亀裂の幅は優に十メートルはあったが、リストは軽々とその谷を跳び越え、神声塔が立つ丘がある向こう側へと着地した。
至極面倒臭そうに、その後をイブも続いた。
………無言で佇む、孤独な神声塔。
凍て付いて黒ずんだ壁にはたくさんの亀裂が生じ、その僅かな隙間に細かな雪が溜まっていた。
天を目指して伸びるのっぽの塔の姿をぼんやりと見上げ、二人は中に入ろうと試みた。
入口までの積雪に覆われた道には、足跡など無い様に見えたが………隠した痕がある。
しかも狩人は余所者を忌み嫌うと聞いた。
………狩人は殺しのプロ。気配を消すなどちょろいものだろう。
…たとえ捜し当てたとしても、余所者で何者なのかも分からない自分達が不用意に近付けば、問答無用で噛み付かれるに違いない。
ガブガブと。
「………そりゃあ護衛を付けるのは分かるよ?高貴な王族様だもん。………でも…だからって、よりによって狩人を雇わなくったって………………ああ、暖かいお城に帰りたい……そして隊長に撫でてもらうの…」
「下らない事ほざいている暇があったら働けよ、陛下至上主義の馬鹿が。……よし、とりあえず…もう少し他に痕跡が無いか確かめるぞ。城へのルートは一つじゃないからな……どの道を行ったのかしらべないと…」
「………へーい……気が乗らないなぁ……」
ブツブツと文句を言うイブを傍目に、リストは背後に広がる森の方に後退し、助走をつけて谷の手前で大地を蹴った。
谷の巨大な亀裂の幅は優に十メートルはあったが、リストは軽々とその谷を跳び越え、神声塔が立つ丘がある向こう側へと着地した。
至極面倒臭そうに、その後をイブも続いた。
………無言で佇む、孤独な神声塔。
凍て付いて黒ずんだ壁にはたくさんの亀裂が生じ、その僅かな隙間に細かな雪が溜まっていた。
天を目指して伸びるのっぽの塔の姿をぼんやりと見上げ、二人は中に入ろうと試みた。
入口までの積雪に覆われた道には、足跡など無い様に見えたが………隠した痕がある。