亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………慣れない貴族の生活を学んで……なんとか少しでも溶け込める様に頑張りました。………………それから二年程経ってから………………病で、夫は亡くなりました。それからすぐに………ユノを産みました。………悲しいのと嬉しいのが同時に来て……どうすればいいのか分かりませんでした。………あの子を産んだ後すぐに………赤ん坊だったあの子は、奥様達に連れて行かれてしまいました………」
…私の子供を返して下さい。あの人の子を返して下さい。私とあの人の子を………返して。
………ユノを、ユノマリアンを返して…。
………しかし、サリッサの訴えは聞き入れてもらえなかった。
王族の血を引く、王族の末裔。しかも、待望の男児。
…王位を持つ唯一の人間となったユノは、王になるための教育をしなければならない。
商人の出のサリッサには、教育を任せられない。
身分の高い人間の教養を身につけなければならない。
下級民の言葉やなまり、妙な仕草や習慣がうつってはいけない。
そう言って、夫人達は赤ん坊を……サリッサの手の届かない所へ連れて行ってしまった。
「………産んだ後………次にあの子に会ったのは…………………………あの子が、5歳の時でした。………とても、驚きました……。………本の少し前まで赤ん坊だったあの子が………ちゃんと立って、歩いて、流暢に話して………………とても……あの人に似ていて………泣きそうでした」
「………」
……五年振りに再会した親子。
父と同じ、青い綺麗な髪のユノは不思議そうにサリッサを見上げていた。