亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
召使達がユノに、「この方はユノ様の母君様ですよ」と言うが………ユノは特に何か言う事も無ければ何の反応も無く、興味が無くなったのか………何処かへ走って行ってしまった。
後に残されたのはポカンと呆気にとられるサリッサと、慌てふためく召使。
………何とも奇妙な再会だった。
「………それから何度か……会う様になって………………お母様と、呼んでくれる様にはなりましたが………お互い、何処かよそよそしいというか…ぎこちないというか………あの子は、あまり目を合わせてくれなくて……。………奥様達も、裏ではあの子に私の事をどう言い含めているのか分かりませんでしたが………多分…良い事ではないだろうなって……」
ユノも……父親と同じ、籠の中の鳥。
籠の中で生きてきた、悲しい子。
外を見ては外に憧れ、我が羽を見ては、落胆する。
………飛び方を、知らないから。
………あの子を、救ってあげたい。
あの人と同じ様に……また…。
………でも……あの子を籠の中の鳥にしてしまったのは……私のせい。
卑しい身分を持つ、私のせい。
私が貴族ならば………もっとあの子に愛情を与えて………自由にさせてあげられたかもしれないのに。
………全部………全部……私のせい。
あの子が怒るのも、悲しむのも………母が私である事、故に。
少しでもあの子を変えてあげたくて………この旅に同行する事にした。多くの反対を…押し切って。
「………でも……元凶の私が……あの子を変えられる筈も無いのです…。…………………………どうして私なんかが……あの子の母親なのでしょう…」