亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
悲しげな笑みを浮かべる一人の母親を見下ろしながら、ザイはただ……無言だった。
………そんなことはない。
貴女がいるから、ユノはいる。
少なくとも、貴女の夫は………幸せだった筈だ。……救われた筈だ。
貴女のせいでも、何でもない。
本当の元凶は………この、残酷な……世の中なのだ。
苦しむのは、犠牲になるのは……最愛の、我が子。
彼女はそう言って己を恨む。
自分を恨んで、恨んで、嘆く。
―――それは、間違いだ。
貴女に罪は無い。誰も、悪くなどないのだ。
(………)
………………そう言いたかったが………ザイは、言えなかった。
………言える筈もなかった。
―――……己を、思えば。
………そう………私も。
(………悲観な過去に溺れる……一人に……過ぎぬ……)
「………ユノ、そろそろ雪合点止めよう…」
「レト、雪合戦だよ。そろそろ覚えてよ。……でもどうして?」
「………………父さんが、そろそろ行くぞって………言ってる」
雪とアルバスの投げ合いを中断した二人は揃って、自分達を眺めていた親に視線を移した。
……仁王立ちしているザイが、何も言わずにこちらをジッと見ている。
「………なんか、睨まれてるだけに見えるけどなぁ…」
渋々遊びを止めて、二人と雪塗れの元気な雛は、彼らの元に戻って行った。
もっと遊びたいだの何だのと愚痴を漏らすユノと、歩調を崩さず無言で歩いて来るレト。
そんな二人の子供を見詰め、サリッサは笑った。