亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………でも…………あの子、変われるかもしれません……」
「………?」
怪訝な表情で見下ろしてきたザイに、サリッサは微笑んで言った。
「………変わりますわ……あの子。私は変えられないかもしれないけれど……………………………あの子達二人なら……二人一緒なら………変われる気がする。………………そう、思いますの」
あの子、笑っているもの。
とても楽しそう。
とても嬉しそう。
無邪気で、明るくて………。
あの人みたいに。
あの人と、同じ様に。
笑っているもの。
私とあの子の間にある、いつの間にか出来てしまった深い溝は………埋められないかもしれないけれど。
私は、いい。
あの子さえ、幸せになってくれれば…。
お願い。
お願い、シオン。
あの子のために、祈ってあげて。
私は、いいから。
「………行きましょう。……日が暮れる前に、何処か安全な場所を探さねば」
戻って来る子供達を見ながら、ザイは言った。
深い深い、雪の中。
目指す場所はまだ遠く、影も形も見当たらない。
何が潜んでいるのか、分からない。
どんな危険が待ち構えているのか、分からない。
だけど…。私は………守るから。
全身全霊で、貴方を。
「…ええ、行きましょうか」
真っ白な小さな首飾りを握り締め、サリッサは、立ち上がった。