亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
8.腹の底は明るみへ
………おおおさ。
……大長……。
お願い。
貴方が聞いたら怒るかもしれないけれど。
心の中だけでいいから。
お父様と、呼ばせて下さい。
お父様…。
………牢獄は……暗い?
………ジメジメしているの?
………ちゃんと、何か食べていらっしゃるの?
………昔みたいに豪勢な食事はもうとれないけれど。
……貴族の位を取り上げられて……平民となってしまったけど………これで良かったのだと、今は思うの。
お父様、太陽は、あんなにも眩しくて、暑くて、神々しいのね。
苦労して手に入れた水は、あんなにも美味しいものだったのね。
この国は………何処までいっても砂ばかりで………果てしないのね。
……お父様、お元気ですか。
……『鏡』に移る貴方はいつも、お顔の色が優れない。
………『鏡』が姿だけでなく……貴方の声まで聞かせてくれたら……良かったのに。
大丈夫よ。
大長。お父様。
貴方の代わりに、貴女の娘が………長として皆を引っ張っていくから。
大丈夫。
大丈夫。
………貴女の一人娘は、元気よ。
お父様………頑張るから。
頑張るから。
すぐに、そんな所から出して差し上げるから。
お父様。
…ドールはいつも、見守っています。