亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
彼の店に来るのは、よっぽどの物好きか、もしくは情報を買いに来る悪そうな人間、親しい狩人。
そう…そのため彼の店には普段………誰も、来ない。
一人も来ない日など当たり前。
………なのだが……今現在……自分の店には、数人の人影。
………客人…であることは間違いないが。
(………ふん…………いけ好かないのぉ…)
やけに長い煙管の灰を叩き落とし、コムは横目でその客人を始終観察していた。
黒のマントを羽織り、目元が隠れるまでフードを深く被った妙な連中だ。
その辺の輩とは違う事は、彼等の体格を見れば一目瞭然。
…がっちりとした体格は、並の鍛え方をしていない筈だ。…そしてマントからチラチラと見える重々しい剣。
(………兵士……かね…。………暑苦しいバリアンかい…)
………近頃、バリアンから兵士らしき多くの人間がなだれ込む様に入って来ている事は知っていた。
密輸している商人とは明らかに別の目的での不法侵入。
………不法も何も無いが。
…以前見つけた、奇妙な依頼。……確か、親子連れの暗殺依頼だったが、あれの出所は調べた結果……どうやら、バリアン兵士が出したものだという事が分かった。
少年と母親の親子連れ………どういう経緯で巻き込まれたかは知らないが、多分、この暗殺依頼の標的となっている親子を護衛しているのは、ザイ達親子。
ザイには知り合いの狩人を通して、及ぶやもしれない危険を先日伝えた。
………その、親子を狙っている兵士等が………ウチの店に来たのは……。
「………兄さん達…『情報』を買いたいのかい?」
……探るためか。