亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
黙り込んでしまった男を傍目に、淡々と独り言の様に呟くコム。
煙管を咥えたまま、続け様に今度はパイプに煙草の葉を詰めだした。
「………依頼期間は次の下弦の月が昇るまで。依頼遂行の証は王子の首。……死体は首さえ無事ならばどんな状態でもいい。先に持ってきた者に報酬を与える。そんな変わった依頼……あまりお目にかかれないね。………………依頼主は恐らく………………バリアン。………………………………お前さん達も、その数多くいる依頼主の一人じゃろう?………ふん………まるで人事の様に話しおって…………………何を澄ましておられる……カカカ」
………自分達が依頼主であるどころか、バリアンの者であることもこの老いぼれは見抜いていた。
………気味の悪い汗を流しながら、男はごくりと息をのんだ。
「………さすがだな。………情報屋と名乗るだけのことはある…。………そこまで分かっているのならば、話は早い…」
言うや否や、男はコムと自分の間を遮る、ランプが立つ簡素な台に両手を突き、身を乗り出した。
「………………王族の、今現在の行方と、護衛についている人間の事について情報を知りたい。………正確なものだ。お前程の力量ならば、容易い情報だろう?」
威圧感を与える男の態度。………男の話からすると、まだ行方不明の王族は見付かっていないどころか、その行方については全く把握していないようだった。
………数百の兵士を送り込んでおいて……何て様だ。
……ま、護衛が雪国を知り尽くしたザイとレトならば、無理は無いか。