亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
「………………お客人よ…」
フー…と、青色を帯びた煙をコムは床に吹き掛けた。
思わず噎せ返る様な濃い煙草の煙はゆっくりと天井に昇り、無言で漂う淡い闇に溶けて無くなった。
「………何か………勘違いしてないかの…?」
「……勘違いだと?」
……肝心な答えを言わないどころか突如、訳の分からない事を言い出した老人。
老人は見下した様な…なんだか癪に障る笑みを口元に浮かべ、煙管ではなくパイプをスパスパと吸っている。
「え~え………勘違いじゃよ。………………情報ってものは………くれと言われて、はいどうぞと気安く渡せる様な代物じゃあない…。………価値は、人それぞれ。ゴミにもなれば金の山にもなる。そこらの痴話喧嘩を起こすものから………国一つ動かすものまで……ある。……お分かりかね、客人よ。………………欲しいのならば、それなりの額になりますぜ……」
カカカ…とコムは男を見上げて意地悪く笑った。
……案の定、顔をしかめる男。背後に立つ他数人も、眉間にしわを寄せた不愉快そうな形相になっている。
………交渉するつもりなのか、男は仲間に目配せした後、「………幾らだ…」と訊いてきた。
…王族がなかなか見付からず、主に顔向けが出来ないでこやつらも焦っているのだろうな。
人捜しの様なその手の情報を得るのは簡単だ。実際、内容はかなり規模のデカい依頼だが、こやつら依頼主のそのまた依頼主が国王様なら、こちらの要求する額を払えるだろう。
………いい仕事だ。一獲千金とはまさにこの事。
おいしい話には違いない。
………だが。