亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
………もう片方の手中にある壊れた煙管をクルクルと回し……ギュッと、握り締めた。
「………お前さん達は……レトの坊主より、格段………下じゃな」
含み笑いで言うと、コムは剣の刃を掴む指先に力を入れた。
―――……途端、兵士の厚く重い剣は………細かな亀裂を刻み、パキンッ…と悲鳴を上げて真ん中から折れた。
押さえ付けられていた剣がいきなり自由の身になり、兵士は反動でのけ反った。
ぐらりと揺れる兵士の視界は天井を映し、そこにぶら下がった何百ものランプを映し………直後、不敵な笑みを浮かべてこちらを見下ろす、跳躍したコムの姿を映した。
右手に壊れた煙管を握り締め、振り翳したその姿は徐々に大きくなり、そして。
………煙管の先端が喉を貫通した激痛と共に、兵士の視界は真っ暗となった。
「…………こいつ…!」
「………ひっ…!?」
老人とは思えない素早い身のこなしで仲間の喉を突き、どうと倒れた屍から何とも平然とした顔で煙管を抜くコムを見下ろしながら、兵士達は後退した。
…ピクピクと痙攣する兵士の喉から無造作に煙管を抜いた途端、真っ赤な鮮血が噴水の如く噴き出し、天井や壁やらのあちこちを赤く染め上げた。
全身に生暖かい血を滴らせたコムはゆっくりとその場で立ち上がり、溜め息混じりにパイプを咥えた。
「………………わしの私物を壊した報いじゃ。………愚か者めが………」