亡國の孤城Ⅱ ~デイファレト・無人の玉座~
知らず内に、異端者を忌み嫌う狩人達が総動員で、バリアン兵士という害虫駆除をしていたのだ。
………この、根っから明るいが厳粛な若き狩人であるアオイも既に何人か殺していると言うのだから………今現在デイファレトに潜伏しているバリアン兵士は、予想よりも少ないのかもしれない。
………バリアンの王様はそれはそれはもう……頭を抱える事だろう。
「………そうそう、コム爺さん。……ザイへの伝言、言われた通り、ちゃ―んと伝えてきたぜ」
アオイは思い出した様に手を叩いて言った。
……王族暗殺、という依頼が出回っている事にいち早く気付いたコムは、どうやら何かしら面倒な事に巻き込まれているらしいザイに危険が及ぶ…と察知し、充分に警戒する様にという伝言をこのアオイに伝えてもらったのだった。
ザイを知る狩人はとてつもなく多いが、知り合いははっきり言って少ない。
昔同じ依頼で協力し合ったアオイは、狩人の中で最も親しい、仲間と呼べる人間の一人だ。
「………伝えたはいいが……早速、一悶着あったみたいでさ。…塔付近で……王族暗殺の依頼を受けた狩人に襲われたらしい。………まぁなんとか…返り討ちにしたみたいだがな」
……ああ…予想通り。コムは盛大に溜め息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。
「………言わんこっちゃない。………ほれ……もう引き返せない場所まであの親子は踏み入れてしまったのじゃ……わしはもう知らん…」
店仕舞いするかの…と独り言を漏らすコム。アオイは顎に手を添えて一瞬思慮に耽った後、コムに向き直った。
「……依頼を引き受けた狩人は、二組みって前言ってたよな、爺さん…」
「ああ。そうじゃ」